2021年にアニメ化されたオッドタクシー(ODD TAXI)の【第1巻】を読んだので、あらすじ・ネタバレ・感想をまとめています。
しがないタクシー運転手である小戸川 宏、41歳。
身寄りはなく、あまり他人とも関わらない小戸川は、友達と呼べるのも高校からの同級生と、かかりつけの医者である剛力くらいのものだ。
しかしそんな小戸川が乗せるのは、一癖も二癖もある客ばかり。彼らの会話が、やがて一人の少女の失踪事件へと繋がっていく…
※以下ネタバレを含むので、先に無料で読みたいという方は下記から無料で読む方法をご覧ください。
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オッドタクシー【1巻】のあらすじ
冴えないタクシー運転手の小戸川 宏、41歳。
彼が乗せるのは、とにかくSNSでバズりたい学生だったり、アイドルに貢いでいるフリーターだったり、売れないお笑い芸人だったりと様々だ。
ある日小戸川の元に、見知った顔の警察官、大門(兄)がドライブレコーダーを見せろと近づいてきた。
どうやら小戸川が女子高生失踪事件に絡んでいるという噂があるらしいのだが…。
この先ネタバレを含みます。アニメ派の方や未読の方はお気を付けください。
オッドタクシー【1巻】のネタバレ
【1話】
セイウチの小戸川 宏(おどがわ ひろし)41歳。彼はタクシー運転手だ。
自分の車(タクシー)にエンジンをかけると、東京都練馬区で女子高生が行方不明になっているというニュースが、ラジオに乗って流れてきた。
女子高生は、今月の4日の深夜に自宅から外出した後連絡が途絶えており、警視庁が100人態勢での捜索を開始したというニュースだ。
次にラジオで流れて来たのは、漫才師ホモサピエンスのトークだった。去年は1回戦で敗退してしまったが、今年はN-1回戦を突破したという。
ちょうどミステリーキッスのファーストシングル「超常恋現象」が流れようとしたとき、小戸川のタクシーにコビトカバの学生が乗ってきた。
彼の名前は樺沢 太一(かばさわ たいち)22歳。SNSでバズることを目標としている。
「しょうもないことに命かけてるんだな」と言う小戸川に、「大事なことなんですよ。いいねやフォロワーの数がそいつの値段と言っていいくらい」と樺沢。
どういうのがバズるのかと尋ねる小戸川に樺沢は一例を見せるが、小戸川は「気持ちわりぃ」と嫌悪感をあらわにした。
突然、「いいこと思い付いた!」と樺沢。「運転手さんが自撮りで俺とツーショットしてくださいよ」と小戸川に頼み込む。
『待ってwwwタクシーの運転手に就活うまくいってない事相談したらスマホ奪われてこれ見て元気出せよってツーショット撮られたんだけどwww』
小戸川との写真を、早速SNSに載せる樺沢。捏造でもなんでも、バズればいいのだ。
「そんなんでバズるかよ」とツッコミを入れる小戸川。
と、小戸川の運転するタクシーは検問に引っかかった。検問しているのはミーアキャットの大門兄弟(36歳)だ。
小戸川とは顔見知りなので「なんだ小戸川か」と大門兄は軽口を叩く。
「この男を見なかった、か」
大門(兄)からドブの写真を見せられた小戸川は、「お前こいつと仲良しだろ」と返す。
しかし大門(兄)はタクシーを叩き、「便宜上聞いてんだ」と凄んだ。
不思議そうにする大門(弟)に、兄は「こいつは頭がおかしいんだ」と小戸川のことを指す。
タクシーが去ってから、「なあ兄ちゃん、指名手配のドブと兄ちゃんが仲良しってどういうことだい?」と尋ねる大門(弟)。
兄は、あんなタクシードライバーのいう事なんか信じちゃいけないよと誤魔化した。
一方、警察の検問なんて初めて見たと興奮気味の樺沢。
小戸川は、大門(兄)のことを「嫌な奴なんだ」と評する。
「運転手さんはなんでタクシードライバーになろうと思ったんですか?」
樺沢の質問に、誰かが横たわっているシーンを思い出し、言葉に詰まる小戸川。
小戸川が答える前に、樺沢は目的地に着いたようでお金を支払い降りて行った。
樺沢を降ろし、ラジオのスイッチを入れる小戸川。
チャンネルを操作していると、再度練馬区の女子高生行方不明事件のニュースが流れてきた。
道端にタクシーを止め、頭を抱える小戸川。
そこへ「あのー、今乗れます?」と子供連れの家族が声をかけてきた。
黙ったまま、子どもを見つめる小戸川。
「あの~…あのっ!」再び声をかけられるも「……はい?」と返す小戸川の様子に、旦那のほうが小戸川の異変を感じ取り、「他探そう」と提案する。
車から離れていく家族を見つめながら、小戸川は考え事を始める。
___と、意識が飛んでいたのか、車の中に水が入ってきて溺れる夢を見て我に返る小戸川。
車の中では、先ほど樺沢が忘れていった携帯電話が鳴っていた。
電話越しに、さっきのツイートがバズっているかどうか尋ねる樺沢。
「なんか通知鳴りやまないよ」と返す小戸川。
それもそのはず、小戸川と樺沢のツーショットの背景に、先ほど大門が検問してきた指名手配の男が写りこんでいたのだ。
樺沢の元に携帯電話を届けるために、再びタクシーを発信させる小戸川。
そのタクシーの横では、指名手配の男がアルパカの女性と連れ立って歩いていた。
【2話】
『警察によると女子高生は午後10時頃、家族と話した後深夜に外出、自宅近くのコンビニエンスストアで一人で買い物をして店を出た後、タクシーに乗車したのが防犯カメラの映像に映っていました。
この後行方が分からなくなり、6日に母親から警察に行方不明者届が出されました』
テレビでは、今日も女子高生行方不明事件のニュースが流れている。
テレビを消し、小戸川は
「お前…幸せなのか?
別にいつ逃げてもいいんだぜ
閉じ込めてるわけでも縛ってるわけでもない
お前が勝手にここにいついたんだ
なんで俺んち来たんだっけな…」
と、ふすまの向こうにいる相手に向かって話しかけた。
家を出る前にも「…本当に いつ逃げたっていいんだからな」と念を押す小戸川であった。
「どうだ小戸川 眠れているか」
小戸川を見てくれているのは、医者であるゴリラの剛力 歩(ごうりき あゆむ)41歳だ。
落語を聞きながら寝るものの、すっかり内容を覚えてしまったと小戸川。
「落語って笑風亭呑楽師匠の?」と聞いてきたのは、看護師であるアルパカ、白川美穂(28)だ。
彼女は呑楽師匠のオリジナル消しゴムを持っているという。
この世に一つしかないそれを、白川美穂は「差し上げます」と小戸川のポケットに押し込んだ。
「なあ小戸川
俺は何に見える?」
落語の会話をぶった切り、小戸川に質問する剛力。
「何、って、ゴリラだ」小戸川の回答に、剛力はふふっと笑った。
「落語ってアプリとかで聞くの?」と白川美穂。
「いやカセットテープだよ」という小戸川に、白川は不思議そうにする。
最近の子は知らないんだよとフォローする剛力だったが、自分たちだって触った事ないけど蓄音機とか昔の磁石式電話機とか知識として知ってるだろうと小戸川。
「ジェネレーションギャップアピールいらねえんだよ」
小戸川の言葉に剛力はため息をつき、早いとこ結婚したらどうだと提案する。
小戸川は強めの睡眠導入剤を貰い、病院を後にした。
病院から出ると、大門(兄)が小戸川のタクシーをこじ開けようとしていた。
「お前が、練馬区の女子高生失踪事件に絡んでるって情報を得たんだよ」と大門(兄)。
小戸川は、本当に捜査なのかと大門(兄)に問いかける。
大門(兄)は「やましいことがないならドアを開けてくれ」と小戸川に言い放った。
小戸川がタクシーを開けると、大門(兄)は「…社内撮影ができるタイプのドライブレコーダーだよな?」と小戸川に確認する。
どうやら、小戸川が練馬の女子高生を乗せたらしい。
「とりあえず録画データはこちらで預かる」と大門(兄)。
しかし警察には行くなと釘をさす。
「……もし行ったら?」
小戸川の問いに、
「わかんないけど、拳銃持った指名手配犯がお前を殺すんじゃない?」
と大門(兄)。
大門(兄)が去るのを見ながら小戸川は牙を鳴らし、「人の車ベタベタ触ってんじゃねえよ」と独りごちた。
居酒屋にて、マッチングアプリを開いているシロテナガザルの垣花 英二(かきはな えいじ)41歳。
年収のところを3,000万に設定し、大きなため息をつく。彼の仕事は清掃だ。勿論3,000万なんて年収ではない。
自分なんていなくても現場は周ること、社会から見れば自分は掃除される側だと女将に愚痴をこぼす。
そこへ剛力がやってきた。
体調はどうだと聞かれ、腰以外は悪くないと垣花。
「…あんたらからも説得してくれないか?」
剛力は、小戸川に大きい病院で診てもらった方が良いと考えているのだ。
「あいつ変だと思わないか」という剛力の言葉に、「昔から変だよあいつは」と垣花。
他人が嫌いで皮肉屋で、両親に捨てられたという小戸川。そりゃ歪むよと言葉を続ける垣花に「違うんだ」と剛力。
「なんかこう…もっと根本的な…」
剛力の言葉を受け、垣花は「…そういえば、この前大門に会った時なんか妙なこと言ってたような…」と返す。
「それがさあ、小戸川が練馬の失踪事件に絡んでんじゃないかって」
「まっさかぁ~」笑い飛ばすのは女将だ。
「小戸川の隣人に聞き込みに行ったんだって! そしたら一人暮らしのはずの小戸川が誰かと話してる声が聞こえるって!」垣花の言葉に、「電話じゃないの~」と女将。
「警察はドブを追ってるって聞いたけどな」と剛力。
ドブは、クラブで酔って暴れてる反グレみたいなグループを一人でぼこぼこにした、地下格闘家を一発でKOしたとかいう武勇伝があるようだ。
「もうバイオテクノロジーしかないらしいすよ。あの人倒すの」と垣花。
ドブたちの噂話をしている剛力の元に、師長から電話がかかってきた。
向精神薬が合計6,000錠ほど足りないという。
「いつから足りないんだ」と尋ねる剛力に、師長は「いつからかはわかりませんが、今日も減っていました」と回答する。今日のシフトはアルパカの白川美穂だ。
「…勤務終わりにタクシー乗るって、ナースって儲かるんだな」
白川は、小戸川のタクシーに乗っていた。
「私のこと覚えてるんだ」という白川に、「この辺でアルパカはあんたしかいない」と返す小戸川。
フフと笑う白川に「何がおかしい?愛想笑いか?ほんと若い奴って何考えてるかわからない」と剛力。
そんな彼に白川は、
「ジェネレーションギャップアピールいらねえんだよ」
と、小戸川が病院で白川に放った言葉を返した。
一方、ドブは大門(兄)から、小戸川のタクシーのドラレコのデータを受け取っていた。
【3話】
「嘘だろ」
垣花と小戸川は二人でサウナに入っていた。
小戸川から、白川と連絡先を交換したことを聞き、信じられないという顔をする垣花。
「いい歳のタクシー運転手だぜ。都合のいい足として使われてるだけじゃねーの」という垣花に、「休みの日に食事に行きたいって」と小戸川は返す。
白川を乗せて走る小戸川のタクシー内では、お笑い芸人ホモサピエンスのトークラジオが流れていた。
ホモサピエンスの片割れがエゴサ―チしたところ、『ホモサピエンス面白くない』という意見が大量に出てきたようだ。
笑いは知性と教養が無いと分からないので、要するに大衆がアホなんだと公共の電波に乗せて批判する。
そこへ読者からのメールが届いた。東京都に住む高校生、長嶋聡くんからのメールだ。
『こんばんは。ホモサピエンスの単独ライブ観に行きました。
まずライブは基本的にファンが見に行くのでウケるのは当たり前です。
それから自分の価値を信じ信念を持つのは素晴らしいことですが自分を認めてくれない人達を強要のない素人と一蹴するのはプロとして恥ずかしいことだと思います。
自信と過信をはき違えないでください。
あと煩悩イルミネーションと比べて圧倒的に華が無いです。』
手厳しいメールに「もうそいつここ呼べや!!」とホモサピエンス。
「もしかして気まずいの?」
ラジオを遮るかのように、白川が口を開く。
「ラジオ、流しっぱなしだから」という白川に「毎週聞いてるから習慣で…」と言い、小戸川はラジオを消す。
白川は、何故眠れないのかと小戸川に質問を投げかける。
小戸川は眠り方を忘れたと答えた。
「すっごいどうでもいい話していい?」と尋ねる白川に「どうでもいい話しかしてないだろ今のところ」と小戸川。
「…でも俺思うんだよ
どうでもいい話なんかないいんじゃないかって」
「どういうこと?」と聞き返す白川に、小戸川は言葉を続ける。
「原因があって結果があるだろ?
因果の法則って言うんだけど。
例えば山登りをしていて道を間違えたとしよう。
頂上の景色が見たかったのに、道間違えたせいでどうでもいい川なんかを見たりして。
軌道修正して登ってる最中はそれを無駄だったと思うかもしれない。
でも頂上に辿り着いた時綺麗な夕焼けが見られた。
もしくはもっと小さなことでもいい…下山したらバスが来たとか。
そしたらあのどうでもいい時間のおかげだと肯定する結果を導き出せるわけ。
つまり俺の言いたいことは、一見無駄に見えても、実は無駄なものなんてないんだよってこと」
しかし白川は黙ったままだ。
「こんな響かないってことある?」と言う小戸川に、「ごめんなさい『原因があって…』からもう見失ってた」と白川。小戸川の一番最初のセリフだ。
「小戸川さんは好きな人いないの?」と白川。
「いないよ」と返す小戸川に「もったいない。恋すると人生楽しくなるよ」と白川は言う。
「まだ41じゃん。これからだって」と言葉を続ける白川に、何故年齢を知っているのかと尋ねる小戸川。白川はカルテを見たという。
小戸川は、本当に歳をとると学生の頃の夢を見ると話す。
そして目覚めてから、現実に返った時の切望に驚くと続けた。
「だから何が言いたいかっていうと、後悔のないよう年をとりたいね」
「後悔してることがあるの?」と聞く白川に、小戸川は「……ないよ。何もない」と答えた。
「…あんたは何かあるのか?
後悔してること」
小戸川の質問に、「…看護学校行くのに奨学金 借りたことかな」と白川。
当時は意地を張って、親に頼りたくなかったようだ。まだ返せていないのかという小戸川の問いに、
「ううん。返せた」
と白川。
宮崎の生まれだという白川に、小戸川は宮崎民謡歌ってよと振る。人目を忍ぶ恋の歌だという。
自分はまっとうで幸せな家庭をもって宮崎の良心を安心させたいと白川。「28じゃそろそろ焦るのも無理ないでしょ?」と言う白川に、「好きな人いるの?」と小戸川は尋ねた。
写真があるとのことで、「見たい見たい。垣花に教えてからかってやる」と言う小戸川だったが、画面に写っていたのは自分の顔だった。
白川とのやり取りを小戸川が伝えると、呆然としている垣花。
「悔しいけど小戸川。チャンスだよ、これ」垣花の言葉に、「なんのだよ」と小戸川。
「俺らこのままいけば独身コースまっしぐらだぜ。あんな綺麗な嫁さんゲットしたら大金星だよ」
そういう垣花に対し、結婚って別に勝ち負けじゃないだろと小戸川は返す。
じゃあ白川さんのことどう思っているのかと尋ねる垣花に、「嫌いじゃないけど…」と小戸川は言葉を濁す。
「まあ…好き寄りかな」という小戸川に、「どれくらい? 好き度のサイズ感的に」と垣花。
「…米国のサプリくらい」
小戸川の返しに、垣花は「ある種でかめじゃん」と突っ込んだ。
どうすればいいかと小戸川は相談する。
慎重にいってもやばいし、積極的に行くのも必至だなこのおっさんって思われるだろうから塩梅が難しいなと垣花。
「…でもさ、真面目な話。小戸川の良心が帰ってきた時に嫁でもいりゃあさぞかし喜ぶだろ」と言う垣花に、「……それより、両親がいなくなった俺に生活費を送ってくれた人に幸せな姿を見せたいなとは思う」と小戸川。
育英会みたいなところが、小戸川を金銭的に助けてくれたのだ。
サウナから上がり、「これからタエ子ママんとこ寄ってく?」と垣花。
しかし小戸川は、これから夜勤だからと断った。
タエ子ママが久しく小戸川の顔見てないっていうからと、垣花は脱衣所で小戸川の写真を撮る。
そんな時、垣花の元に『マッチングが成立しました!』というメッセージが届いた。
相手は「しほ」という18歳の女の子だった。
宮崎の民謡を歌いながら、マンションの一室に入っていく白川。部屋の中にいるのはドブだ。
白川の手には、小戸川をご飯に誘うSNSのメッセージ画面が映っていた。
【4話】
2いいねしかついていない自分のSNS画面を眺め、頭をかきむしる樺沢 太一。彼はとにかくバズりたいのだ。
30分前にトレンド入りしている、笑風亭呑楽師匠の投稿は、14万リツイートもされている。
一方、一番バズった自分の投稿である、小戸川とのツーショットは2万リツイートだ。
アイドルグループ「ミステリーキッス」のメンバーであるトイプードルの二階堂ルイ(18歳)は握手会・チェキ会を行っていた。
常連である今井に愛想を振りまく。スカンクの今井は24歳、フリーターだ。
「また並んでくれたんだ!」と言うルイに「当たり前じゃん!ルイたんのデビューずっと待ってたんだから」と今井。彼は最初のライブから来てくれているのだ。
「チェキどんなポーズする?」と尋ねるルイ。今井が悩んでいると「じゃあ今井さんだから特別…ハグなんてどう?」とルイは提案した。
今井は感激し「デビューシングルも絶対買うからね!」と大喜びする。
「でも……売れるかな…」と心配そうにするルイ。「……そんなに厳しいの?」と尋ねる今井に、「うん…今日も思ったより人少なかったし」とルイ。
今井は、ルイと同じメンバーである市村や三矢も素顔の方がいいと告げる。「可愛いのに勿体ないよ。俺てっきりチェキでは仮面外すもんだと思ってたもん。あれじゃ誰もチェキ撮りたがらないよ」
しかしルイは「この形がデビューの条件だったから…」と話す。
今井は、三矢のダンスがキレ悪くなったよね?と言葉を続ける。具合でも悪いのかなと言う今井に、バイトもレッスンもしながら家でも配信しているから疲れているのかもとルイは返した。
今はキャバのボーイだが、もっとお金持ちになってCDもグッズもいっぱい買うからと熱弁する今井。しかし時間が来て剥がされてしまう。
そんな今井にルイは無理しないでと言いつつ、「でもいっぱい買ってくれたら今度は…チェキにラインID書いてあげる」と耳打ちした。
片づけている市村と三矢に、会場が終わるまでまだ時間があるから外でグッズを手売りしてくるようにとマネージャー。ルイは売り上げが良いから免除のようだ。
仮面したままなんて恥ずかしいと言いながら、グッズを持って外に立つ三矢。
仮面とってもファンなんてつかないと言うのは市村だ。
「自己肯定感低すぎでしょ市村さん」と三矢。「だってもともと素顔でやってて結果がこれだもん。むしろ三矢さんが自己肯定できるのがやばくない?」と市村。
三矢は「私なんだかんだで親に愛されて育ってるからかもしれないです」と返す。
「やば、たしかにそれ大きいかも。
私なんかずっと親からお前には無理だって言われて育ったし」
一方、ネットニュースにも取り上げられているし上出来だ!とルイに話すキツネのマネージャー。彼の名は山本冬樹、34歳だ。
しかしルイは「全然だよ」と返す。
CM打った割に売れていないからだ。もっと今井さんみたいな太客増やさないと…と言葉を続ける。
今井は一番最初のライブに来ていた、5人の中の一人だ。あの頃から追ってくれているのは今井さんだけだと思うとルイ。
その時、マネージャーの山本の元にヤノから電話がかかってきた。
「はい……ええ。
滞りなく。
はい……半分ですよね?
え? ドラレコって?
…探してみます。
運転手の名前は?
…わからないんじゃちょっと…
…そうですよね。分かりました。
はい。はい。
はい…では」
「…なんて?」と尋ねるルイに、山本は「二階堂は心配しなくていい」と答えた。
ライブ後に、タクシーを引き留める今井。
「2,000円まで新宿まで!」という今井に、ここからだと3,500円くらいかかるよと小戸川。
「そこをなんとか!」と頼み込む今井に、小戸川は昼メーターにしてやるから行けるとこまで…と提案するが、今井は「いや新宿までお願いします!!!」と譲らない。
車内で宝くじとにらめっこし、唸る今井。
「宝くじなんか買ってる金あったらタクシー代くらい残しとけよ」と言う小戸川。今井は、ミステリーキッスのCDを買うのに使うと主張した。
ミステリーキッスは苦節2年でようやくデビューした3人組アイドルだという。
最初は5人しかお客がいなかったのに、今は増えたことに対して嬉しいような寂しいようなと気持ちを吐露する今井。
二階堂ルイの圧倒的オーラと歌唱力、そしてむき出しの向上心。三矢雪の身体能力を裏付けるような高次元ダンス。更に市村しほの等身大のひかえめさ!
ミステリーキッスについてあつく語る今井。彼は二階堂応援アカウントを作るほどに熱意を捧げているのだ。
今日はデビューCDの予約イベントで、CDにチェキ券がついているため買えば買うだけルイとチェキが撮れたと今井。
宝くじ買う金あったらCD買えよという小戸川に、せっかくなら宝くじをドンと当ててルイを独り占めしたいと今井は声を上げる。
そして「運転手さんは運良い方っすか?」と尋ねた。
小戸川は、昔死んでもおかしくない事故で助かったから運良いのかもなと返す。しかし今井は、運良かったら事故んないでしょとつっこんだ。
新宿まで2,000円で送ってもらった今井。降り際に、「一応運の良い運転手さんの好きな数字7つ、聞いていいっすか?」と尋ねる。
小戸川の伝えた数字の宝くじを買うためだ。
今井を降ろした小戸川の次のお客さんは漫才師「ホモサピエンス」だ。
【5話】
垣花は、マッチングアプリで知り合った「しほ」の写真を眺めながら、サウナのマッサージルームで頬を緩ませていた。
すると、隣に座った男が「おい」と声を発した。
「あのタクシーの運転手、なんつったっけ」
「小戸川…ですか?」と垣花。
「小戸川…練馬の女子高生失踪事件あんだろ。
小戸川のタクシーに乗ったんじゃねぇかって噂だ」
男は更に言葉を続ける。
「しかしだ。あれからなんの続報も聞かねえだろ。捜索願が取り下げられたんだ」
「じゃあ見つかったんですか」と垣花が言葉を発すると、隣の男は「いや、本人から人伝に連絡があったらしい」と答えた。
「だが家での原因が俺にあるそうだ」
驚く垣花に、男は尚も言葉を続ける。「お前、行方を調べちゃくれねえか。どんちゃんの娘さんなんだ」
「誰!? そう言われましても」とあたふたする垣花。
しかし垣花は隣の男を会話しているつもりだったが、男は電話の向こうの相手と話しているだけだった。
自分の勘違いに、頭を抱える垣花であった。
小戸川の運転するタクシーで会話しているお笑い芸人「ホモサピエンス」の馬場と柴垣。
柴垣は、去年のN-1で「煩悩イルミネーション」が決勝行った時、おめでとうって連絡入れたらしいやんと馬場に尋ねた。
「それ本気で思うたん?」という柴垣の問いに、「? 当たり前やん」と馬場。
「めっちゃ嬉しかったし、頑張れば結果出るんやなって思ったし…」と言う馬場に「頭おかしいんかお前」と柴垣。
「先輩やろうが後輩やろうが結果出した同業を祝福すんな。
SNSで同業の告知を手伝うな。
家で物に当たるくらい悔しがれ。
媚びるな」
更に言葉を続ける柴垣。
「雲の上にいるような大御所から何者でもないぺーぺーまで全員敵や。
面白いと思っても感心するな。
同業のファン全員かっさらうくらいのエゴイストになれ。
例えば僕らの単独ライブに後輩見に来て『面白かったです!』なんて言われたらナメられてると思え。
俺やったら、ほんまにすごいと思ったら、のこのこ挨拶なんか行かれへん。
拳握りしめて、歯軋りしながら、走って帰る」
言葉を返せずにいる馬場に、柴垣は「ほんでお前さっきから何やってんねん」と尋ねた。
馬場はスマホのゲーム「ズーデン」にハマっているという。
柴垣は思わず、馬場が名前そのまんまでゲームに登録していることにつっこんだ。
「芸能人の自覚ないんか」と言う柴垣に、「ファンの子と協力してゲームできるからええねん」と馬場。
ファンの子と交流なんて、彼女はいいのかと柴垣は尋ねる。
馬場は「…こんなとこで言えるわけないやろ」と返した。
「自意識過剰も大概にせーよ。
俺らの知名度 定期預金の金利くらいやぞ」
と言う柴垣に、黙って聞いていた小戸川は「知ってるよ」とぽつりと返す。
「ホモサピエンスでしょ。
いつもラジオ聞いてるよ」
小戸川の言葉に「マジっすか!!」と食いつく柴垣。「顔は知らなかったけど声でわかった」と言う小戸川に、「そこやねんな~」と柴垣。
柴垣は小戸川に、自分たちがどうやったら売れると思うか尋ねる。「俺ら天下獲りたいんすわ」
「……
2人、温度差があるように見えるけど」
小戸川の言葉に、黙る馬場。
「…なあ馬場。
俺が解散するって言うたら、どうする?」
柴垣の言葉に、
「…しゃあないなって思う」
と馬場は答えた。
「俺はお笑いとかようわからんけど…
…なんか、
あんまこんなこと言いたないけど、
俺が心の底からほんまにおもろいなって思うのはお前やねん。
先輩も言うてたよ。
柴垣は才能あるって。いつか売れるって。
だから俺がほんまに足引っ張ってんねやったら、身を引くべきやと思ってる。」
馬場の回答に苛立ちを覚える柴垣。
身を引くとかではなく、先輩に言われて悔しがらないのが致命的だと怒る柴垣に「しゃあないやろ、悔しないんやから!」と馬場。
「ほなお前感情コントロールできんのかい!
そんなんできんなら片思いとかこの世からなくなるやろ!!」
馬場のつっこみに「なんやおもろいやんけ! もっと公共の場に乗せていけよ、そういうの!!」と柴垣は返す。
2人の会話がヒートアップする中、馬場の元にマネージャーから電話がかかってきた。
「レギュラー決まったって」と報告する馬場に喜ぶ柴垣だったが、選ばれたのは馬場だけのようだ。
気まずい空気になりながら、2人はタクシーを降りた。
柴垣と馬場を見送った小戸川。その時、白川から「こんばんは」とメッセージが届く。
返事をしようかと小戸川が携帯電話を見つめていると、一人のお客が乗ってきた。
「小戸川くん。ドライブしよ」
小戸川に銃をつきつけるドブ。
小戸川の携帯電話には白川から「今から会えますか?」というメッセージが追加で届いていた…。
【6話】
小戸川に銃をつきつけ「ドライブしよ」と言ってきているのは、ゲラダヒヒのドブ(39歳)だ。彼は暴力団に属している。
「…構わないよ。ただちゃんと金は払うんだろうな」小戸川の言葉に、「いいお話が聞けたら払おっかな」とドブ。
ボスからの電話を受けるドブ。ボスは、サウナのマッサージルームで垣花が話しかけられていると勘違いしたあの男だ。電話の相手はドブだったのである。
練馬の女子高生失踪事件。捜索願が取り下げられたことは大門兄から聞いたとドブ。
ボスから直々に、行方を調べて欲しいと頼まれたため、女子高生が乗った可能性のあるタクシー運転手の小戸川に近づいてきたのだ。
「大門兄にドライブレコーダーのデータ渡したよ」と小戸川。
データは自分が持っているとドブ。ドブは小戸川に頼みがあると口を開いた。
「一つは口止め。それともう一つ、協力してほしい」
口止めなら既に大門兄からされてると言う小戸川に、警察だけではなく誰にも話してはいけないとドブ。
「誰に持って誰に」と聞き返す小戸川だが、ドブは「誰も彼もだ」と返す。
協力というのは、今後ドライブレコーダーのデータを欲しがる人がいたらドブに教えて欲しいという事だった。
「…嫌だって言ったら?」
小戸川の言葉に、ドブは変わらず銃をつきつけながら「殺す」と言い放った。
小戸川はそっと椅子の下に手を伸ばす。運転席の下にはスイッチがあり、押すと車体に「SOS」の表示が出るのだ。
なぜ必死に女子高生を探しているのかと言う小戸川の問いかけに、「お前は知らなくていい」とドブ。
「何も知らないのに協力はできない。
それにこっちにもある程度情報がないと誰に対して口止めをされているか解らない」
小戸川の言葉に納得したドブは、自分のボスが練馬の女子高生を探していることを伝えた。失踪したのは、ボスの同級生の娘なのだ。
警察は表向き、ドブを疑っているとドブ。
「疑われるも何も
お前警察とズブズブだろ」
と小戸川。「人聞き悪いなあ。大門兄とだけだ」とドブ。弟は違うらしい。
ドブは失踪事件には直接は関わっていないと言う。
「じゃあなんでドラレコのデータをあんたが持ってる」という小戸川の問いかけに、「警察みたいな詰め方するじゃねーか小戸川ァ」とドブ。
ドブは正直なところ、小戸川が失踪事件に関わっていると思っていたようだ。部屋で誰かとお前が話しているという情報もあるとドブ。
「だから最初はお前をユスろうと思ってデータを手に入れた。
お前が事件に関わっているなら高く買うはずだと思ってな」
では自分の疑いは晴れたんだと言う小戸川に、「いや、お前かもしれないと思ってる。が、捜索願が取り下げられた」とドブ。
取り下げられたという事は家族は納得しているのではと言う小戸川だが、「してねえと思うぜ」とドブは返す。
家での原因は、ボスとその女子高生の父親との関係にあるという連絡がきたらしい。女子高生の父親は、反社との繋がりを表ざたにしたくなくて渋々取り下げたんだろうとドブ。
「そんな連絡誰がしてきたんだ?」と尋ねる小戸川。
「こんな入れ知恵する奴は一人しかいねぇ。
ヤノって男だ」
ヤノはドブの後輩だという。ドブはボスへの上納金を納めるために働いているが、ヤノはドブの上納金を上回ることしか考えておらず、恩義や筋で働いていないとドブ。
ヤノはドブを嫌っているので、ヤノに直接聞いても仕方がないようだ。
そのため、今後ドライブレコーダーのデータを奪いに来る奴がいたら、十中八九ヤノか、ヤノの取り巻きに違いないとドブは言葉を続けた。
「だから協力してくれ」と言うドブに小戸川は、「それを直接ボスに言えばいいじゃん」と返す。
ドブはボスには言えず、ドラレコのデータを持ってることを隠してしまったという。
ヤノが普段から、ドブはセコいシノギしかしないってボスに吹聴しているらしい。
「お前をユスろうとしてたなんてセコいって思われるに決まってる」と言うドブに、「そうなの? わかんねえよ反社の感覚」と小戸川。
ようするに、ドブは見栄をはったのだ。
ドブがドラレコのデータを持っていることをボスに知られたくないから、ドブは小戸川に誰にも口外してほしくないこと。そしてデータを欲しがる人がいたら教えて欲しいこと。「なんとなくわかったよ」と小戸川。
「ヤノが失踪事件に関わっているのなら、その証拠を掴んで奴を失墜させることができる…」
しかし小戸川は、
「断るよ」
と言い放った。
ドブが犯罪者なので、どんな奴の片棒を担ぎたくないと小戸川。「殺すって言ってもか」と言うドブに、「お前に人は殺せない。プライドだけは一人前の…小悪党が……」
ドブが銃を小戸川に向けた瞬間、背後から警察の車が近づいてきた。小戸川が「SOS」を表示させて走っていたからだ。
「おい逃げろ! さもないと撃つぞ」と言うドブに「撃ったらお前が捕まるだけだ」と小戸川。
ドブは渋々銃を仕舞う。
車を停車させた小戸川だったが、近づいてきたのは大門のシルエットだった。弟なのか兄なのか。
小戸川とドブの間に、緊迫した空気が流れた。
【7話】
小戸川とドブの乗るタクシーに近づいてきたのは、大門兄だった。
「どうしました?」と尋ねる大門兄に、「見りゃわかんだろ! 強盗だよ! 拳銃持ってんだよ!」と主張する小戸川だったが、「静かにしろ近所迷惑だ」と大門兄。
そして小戸川に、とりあえずSOS表示を切るように伝える。
車に戻った大門(兄)に、「なんだったんだ?」と尋ねる弟。しかし大門兄は、タクシーの故障だと答えた。
「拳銃がどうとか聞こえたけど…」不思議そうにする大門弟だったが、大門兄は「いいかい弟、タクシードライバーの言うことだぜ」と言いくるめる。
大門兄は、昔の交通事故を思い出していた___。
大門達の乗ったパトカーが去ると、運転席に足を乗せ「新宿向かってくれ」とドブは小戸川に言い放つ。
「なかなかの賭けに出たじゃねえか。
SOS表示したタクシーで俺との話を引き延ばし、わざと挑発して銃口を向けさせたのか?
後ろにいたパトカーにそれを見せるつもりで…
本当に俺が撃ったらどうするんだ」
ドブの言葉に「別に。死んでもいいし」と小戸川。
死ぬのが怖くないのかというドブの問いかけに「怖いよ。どうしようもなく怖い。でも面倒な事に巻き込まれるくらいなら死んだ方がマシ」と小戸川。
ドブは、小戸川を脅しても言うこと聞かないのはよぉ~くわかったと答える。
「お前は何で動くんだろうなあ…金も執着なさそうだし…
そうだ! 仲間に危害を加えよう。
誰にしようかなあ…あ!
お友達、垣花…って言ったっけ」
ドブの言葉に「…垣花かあ。あいつも死んだ方がマシかもな」と小戸川。
冷たいなあと言いつつ、小戸川が少し動揺していたことを見抜くドブ。
引き続き、知り合いの名前をあげていく。
「白川」
この単語が出た途端、驚く小戸川に「ここかあ。小戸川くんのウィークポイント」とドブは笑った。
「じゃ、交渉成立ということで、くれぐれもよろしく」
ドブはそう言い、車から降りた。
どこかの山にて箱を掘り起こすドブ。拳銃をその箱の中に仕舞い、ドブは再び箱を土の中に埋める。
一方、ハンドルに突っ伏しながらため息をつく小戸川。しかし白川からメッセージが来ていたことを思い出し、携帯電話を取り出した。
そこには白川から追従で「病院の前の公園で待ってます」というメッセージが届いていた。白川が送ってきたのは午前2時。今の時刻は4時を回ったところだ。
アクセルを踏み、小戸川は急いで公園に向かう。白川は見当たらず、流石に帰ったかと思う小戸川だったが、「…来てくれたんだ」と後ろから声をかける白川。
「…俺に、なんか用?」
小戸川の言葉に、
「…会いたかったってだけじゃ駄目?」
と答える白川であった。
オッドタクシー【1巻】の感想
アニメで評判になっていたオッドタクシー。
めちゃくちゃ面白かったです!!!
登場人物の人間関係がどんどん紐解かれていくところや、色んな人物が小戸川のタクシーに乗ることでそれぞれの人生が少しずつ描かれていくのが非常に魅力的でした。
おそらくだけど、小戸川の家に失踪中の女子高生いるよね???
でもドライブレコーダー渡していたし関係がないのか…?
そしてドブと知り合いの白川さんが何をもって小戸川に近づいてきたのかも気になります。本当に会いたかったから…ではないよね。
剛力先生のところから薬盗んだのも、おそらく白川さんだろうし。
2巻も楽しみです!
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